電動車いすを社会の「移動インフラ」に

自動運転など開発加速も

6月 15, 2022
BY Emi Takahata
電動車いすを社会の「移動インフラ」に
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J-STORIES ー 電動車いすを、身障者や高齢者などだけでなく、誰もが利用できる近距離移動のインフラとして活用しようという取り組みが広がっている。羽田空港では昨年半ばに電動車いすで人を運ぶ自動運転システムが稼働。米国やカナダなど海外の空港でも導入に向けた実証実験が始まっている。
電動車いすによる新しいモビリティシステムに取り組んでいるのは、ベンチャー企業のWHILL(東京都品川区)。2012年に創業した同社は、「すべての人の移動を楽しくスマートにする」を企業ミッションに掲げ、電動車いすを福祉用具ではなく、パーソナルモビリティの手段と位置付けて操作性や快適さの改善に取り組んできた。
同社の電動車いすは、手元のコントローラーでアクセル、ブレーキ、方向転換を操作する。時速6キロで動き、約5センチの段差を安全に乗り越えることができる。 最高時速が遅いため、道路交通法では「歩行者」の扱いになり、運転免許を必要としない。
 洗練されたデザインや様々な色を選べるアームカバーなども、一般的な車いすにはない特色だ。すでにトヨタ自動車や本田技研工業のディーラーでも免許を返納した高齢者などの移動手段として販売する動きもある。WHILLでは今秋、歩道を走行できるスクーターも製品に加える予定だ。
WHILLの企業ミッションは「すべての人の移動を楽しくスマートにする」。自動運転、衝突回避機能を備えたモビリティシステムの展開を目指している。     WHILL 提供
WHILLの企業ミッションは「すべての人の移動を楽しくスマートにする」。自動運転、衝突回避機能を備えたモビリティシステムの展開を目指している。     WHILL 提供
羽田空港では同社の電動車いすを自動運転のネットワークでつなぐ新しい移動サービスが昨年6月14日から第1ターミナルで、7月半ばには第2ターミナル全域で始まった。国内線出発ラウンジのすべての利用者が搭乗ゲートまで自動運転で移動できる。
一方、同社は、横浜のみなとみらいや長崎のハウステンボスなどの観光地でも、域内の移動手段として電動車いすの貸し出しを行っている。みなとみらいでは昨年7月から今年3月下旬まで車いすのシェアリングサービスを実施した。
WHILLは今年5月、トヨタ自動車の子会社であるWoven Planet Groupの投資部門、Woven Capital社からの資金調達で合意した。Woven Planetは自動運転をはじめとしたトヨタの次世代モビリティ社会への取り組みを担っており、Woven Capitalはそのグローバル投資ファンドとして、モビリティ分野の革新的企業に投資を行っている。
Woven Capitalが日本企業に投資するのは今回が初めて。WHILLは調達資金を「生産体制のグローバル拡大やビジネスのサービス事業に重点を置いたリソース強化」に投じる方針だ。
WHILLの電動車いすは、アームカバーの色を光沢のある青・黒・白・ピンク・緑などから選ぶことができる。ファッション性を高め、楽しく使えるように、という狙いがある。     WHILL 提供
WHILLの電動車いすは、アームカバーの色を光沢のある青・黒・白・ピンク・緑などから選ぶことができる。ファッション性を高め、楽しく使えるように、という狙いがある。     WHILL 提供
WHILLの広報 新免那月さんは、J-Storiesの取材に対し、今回の資金調達を通して、Woven Planet の持つ豊富なつながりと知見を活かし、事業の成長を目指していきたいと説明。
また、電動車いす製品の展開については、「車いすはテクノロジー面で改善されているが、そのデザインは100年以上変わっていない。(デザインが変わらない中で)車いすを使う人イコール 歩けない人という概念が根付いている」と指摘。「電動車いすのデザインを改良し、誰もが乗りたくなる・自信を取り戻すきっかけにしたい」と話している。
記事:高畑依実 編集:北松克朗 
トップ写真:WHILL 提供
この記事に関するお問い合わせは、 jstories@pacificbridge.jp にお寄せください。

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上記の記事の内容は、動画リポート(英語)でもお伝えしています。

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