JSTORIES ー フィリピンのスタートアップエコシステムは、着実に成長を遂げている。スタートアップ・エコシステムのリサーチ機関Startup Genome(スタートアップゲノム)によると、2023年にフィリピンは、スタートアップ・エコシステム・ランキングで、91-100位から81-90位にランクアップした。フィリピンの貿易産業省によれば、同国のエコシステム価値は2019年7月から2021年12月までの間に72%の年平均成長率を記録し、その後も成長を続け、2023年末までに64億ドルに達している。
フィリピンのスタートアップシーンの成長は、多くの要因に起因している。その一つは、人口のほとんどが英語を流暢に扱えるということだが、最近になって、初期段階のスタートアップを支援する「イノベーティブ・スタートアップ法(Innovative Startup Act)」や、外国の中小企業がフィリピンで完全所有の事業を設立しやすくするための「外国投資法(Foreign Investment Act:FIA)」の改正などの政府の取り組みが活発なことも重要な要因だ。
以下に、フィリピン、マニラ市出身のJ-STORIESライターDesiderio Lunaがピックアップした農業、持続可能な製品、医療、排出ゼロ輸送の各分野において、持続可能な解決策を提供している4つの成功したスタートアップを紹介する。(前半パートでは一社のみ)
Mayani:テクノロジーでフィリピンの農家と漁師の暮らしを変える
農業(農業、漁業、林業を含む)はフィリピンの重要な産業であり、2023年には国内総生産(GDP)の8.6%を占めている。また、2023年時点で人口の約23.2%が農業に従事している。
このような問題にテクノロジーの革新的な力を活用することで、特に農民の生活改善に貢献しようとしているあるアグリテック(農業テクノロジー)・スタートアップの一つがMayaniである。
Mayaniは、フィリピンの農民と漁師の生活向上を目指す「インパクトドリブン型(社会的影響を重視した)アグリテック・プラットフォーム」を立ち上げたマニラを拠点とするスタートアップだ。農家と買い手を直接結びつけることによって、中間業者を排除し、農家が公正な市場価格で製品を販売できる仕組みを提供している。このアプローチは、食品の持続可能性を促進し、新鮮な食品へのアクセスを広げ、地域農業コミュニティの発展を支援する。
Mayaniは、地元のスーパーマーケットや配送プラットフォームと提携し、農民が販路を拡大できるよう支援している。現在、同プラットフォームには7万人以上の農民が登録しており、取引総額(GMV)は65万ドル以上に達している。
(後半に続く)
後半では、持続可能な製品、医療、排出ゼロ輸送の各分野で活躍している3つのスタートアップを紹介します。
翻訳:藤川華子 編集:一色崇典
トップ写真:JSTORIES (Desi Luna)
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