[PODCAST] 成功するスタートアップコミュニティの作り方 (Part4)

In partnership with Disrupting JAPAN

6月 29, 2025
By disrupting Japan / Tim Romero
[PODCAST] 成功するスタートアップコミュニティの作り方 (Part4)
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JStoriesでは、革新的な取り組みを行う日本のスタートアップを英語でインタビューする人気ポッドキャスト番組 [Disrupting JAPAN]とのコンテンツ提携の下、同番組が配信している興味深いエピソードを日本語で紹介しています。以下にご紹介するのは、CIC(ケンブリッジ・イノベーション・センター)の創業者兼CEOであり、スタートアップエコシステムの牽引役として活躍しているティム・ロウさんとのインタビューで、6回に分けて記事をお届けします。
*このインタビューは2025年4月に配信されました。
本編(英語版ポッドキャスト)は、こちらで聴取可能です。
Disrupting JAPAN:Disrupting JAPANは、Google for Startups Japan の代表で東京を拠点に活動するイノベーター、作家、起業家であるティム・ロメロ氏が運営するポッドキャスト番組(英語)。ティム氏が数年後には有名ブランドになるポテンシャルがあると見出したイノベーティブな日本のスタートアップ企業をピックアップして、世界に紹介している
Disrupting JAPAN:Disrupting JAPANは、Google for Startups Japan の代表で東京を拠点に活動するイノベーター、作家、起業家であるティム・ロメロ氏が運営するポッドキャスト番組(英語)。ティム氏が数年後には有名ブランドになるポテンシャルがあると見出したイノベーティブな日本のスタートアップ企業をピックアップして、世界に紹介している
Disrupting Japan の創立者で自ら番組ホストも務めるティム・ロメロ氏
Disrupting Japan の創立者で自ら番組ホストも務めるティム・ロメロ氏

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2025年2月に行われた、起業家やイノベーターが集う国際的ネットワーク「Venture Café Tokyo」のイベントで、米ケンブリッジ・イノベーション・センター(CIC)の創業者兼CEOであるティム・ロウさんと対談する機会がありました。今回は、その対談内容をそのままお届けします。
ロウさんをこの番組に初めてお迎えしたのは2017年のことで、当時はまだCICが日本に進出する前でした。その際、私たちは日本におけるスタートアップイノベーションの未来について語り合いました。
今回の対談では、あのときの予測はどれくらい当たっていたのか、予想外だったことは何か、そしてこれから日本のスタートアップがどこへ向かっていくのかについてお話ししています。
とても興味深い内容になっていますので、ぜひお楽しみください。
※CICは、米マサチューセッツ州ケンブリッジ発のグローバルなスタートアップ支援組織で、2018年に日本法人(CIC Japan)が設立された。2020年には、主にスタートアップ向けのワークスペースやコミュニティ、各種サービスを提供するCIC Tokyoが東京都港区虎ノ門に開設。また、Venture Café TokyoはCIC Japanの姉妹団体として運営されている。
(全6回シリーズの4回目。第3回目の配信・Part3 はこちらでご覧になれます。)

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「イノベーションは、チームスポーツのようなもの」

CICの創業者兼CEOであるティム・ロウさん        写真提供:西日本鉄道
CICの創業者兼CEOであるティム・ロウさん        写真提供:西日本鉄道
(前回の振り返り)
ティム・ロメロ(インタビューアー、以下ロメロ):世界中で成功例や失敗例を見てきた中で、成功するコミュニティに共通する要素があるとすれば、それは何でしょうか?
ティム・ロウ(以下、ロウ):これまで、歴史を見ても「協力や連携」がイノベーションにとって重要だとは、あまり考えられて来ませんでした。(中略)そして、この「協力や連携」を促す取り組みが、まさにVenture Caféの役割です。私たちは、スキルや関心を持った人々を集め、交流の場を提供し、出会いを生み出しています。
(ここから本編)
ロメロ:少し意見を言わせてください。大まかに言えば、これはどのコワーキングスペース(立場の違う複数の利用者が一つのスペースで仕事をする場所のこと)や取り組みでも言われていることですよね。確かに、様々な人々やアイデアを交流させることは必要で、それがこの仕組みの鍵でもあります。しかし、それを実際にうまく機能させるのはとても難しいことです。
御社は複数の都市や国でそれを実現されていますが、こういった仕組みは最初から計画して作り上げることができるのでしょうか?たとえば、農業や先端技術に特化した大学があり、そこにいる科学者たちとMBA(経営学修士)の学生たちを交流させるといった感じでしょうか?それとも、そうした交流が自然に生まれるのを待ちながら、それをうまく導いていくものなのでしょうか?成功の秘訣は何だと思われますか?
ロウ:やり方はいろいろあると思います。それぞれが自分たちの方法を試して、地域に合ったやり方を見つけるべきです。イノベーションは、チームスポーツのようなものです。フットボールチームのように、それぞれにポジションがあります。CEOかもしれないし、科学者かもしれないし、投資家かもしれませんが、みんなで一緒に働き方を学んでいくのです。中には優勝するチームもあれば、一度も勝てないチームもあります。つまり、大事なのはどうプレーするかということです。
そんな意味でも、Venture Caféチームには本当に感謝していますし、感銘を受けています。例えば、今日のイベントで司会や紹介役を務めていた方は控えめな方ですが、実は日本の起業家コミュニティにおいて最も影響力のある人物の一人です。人と人をつなげるのがうまく、それはまるで素晴らしいアスリートのようなものです。優れたアスリートは訓練によって育てられ、方法論もありますが、多様なアプローチを試し、最も効果的な方法を見つけることが大事だとも思います。そして、幸運にも、私たちの方法が世界のいくつかの場所で成功していることを実感しています。

顧客の力でエコシステムの成長を加速する

サウジアラビア・リアドの金融地区にあるビル群      写真提供:Envato
サウジアラビア・リアドの金融地区にあるビル群      写真提供:Envato
ロメロ:もう一つ気になったのですが、お客様についてはあまり触れられていないようですね。顧客をエコシステムに巻き込む必要はあるのでしょうか?それとも、起業家が自ら顧客を見つけてくるものだとお考えですか?
ロウ:その話をしてくれて嬉しいです。実は、顧客を動かすことこそが、最も影響力のあることだと思います。たとえば、新しい分野で成功を目指している都市があるとしましょう。現在、私たちはサウジアラビアのリヤドで多くの仕事をしています。これはまだ実現していませんが、実際にリヤドで進行中の議論の一部です。彼らは、世界をリードできる分野を探しているのです。多くの人がサウジアラビアを砂漠の国として思い浮かべるかもしれませんが、実際にはここ5年で驚くほど変化を遂げました。
ドイツ・ベルリンでゲーム関連のスタートアップを運営している英国人女性が、リヤドで開催された女性のゲーム開発者向けの会議に参加した際、1,000人もの女性開発者が集まっていて、とても感銘を受けたと言っていました。また、私たちのチームの一員で、米国セントルイス出身の女性スタッフは、ニューヨークをはじめとする他の都市にも住んだ経験があるものの、リヤドが一番好きな街だと話しています。
さて、顧客の力で活性化できる産業について考えてみましょう。例えば、低コスト住宅やモジュール住宅(工場で製造した部材を現場で組み立てるタイプの住宅)は、今後発展が期待される分野です。多くの国や都市で住宅の需要が高まっています。もし政府が、スタートアップから10万軒の低コスト住宅を購入することを約束し、その周りに拠点を作ったとしたらどうでしょう?
低コスト住宅の業界で世界中の何%のスタートアップが、そのような都市、たとえばリヤドに支店を設立すると思いますか?私は95%だと思います。なぜなら、もし誰かに「あなたのスタートアップの住宅を1,000軒分買う」と言われたら、ほとんどの企業がそこへ行くでしょうから。これは政府の政策として大きな切り札になると思います。もし政府が「顧客」としての力を活かせば、スタートアップエコシステムの成長を一気に加速させることができるのです。
ロメロ:とても革新的な考えですね。従来のスタートアップのアプローチは、優れた創業者がアイデアを思いつき、それをどうマーケティングするかを考え、顧客を見つけるというものでした。しかし、あなたは逆の視点を示しています。つまり、まず解決すべき課題を見つけ、その課題に対してニーズがある顧客を集め、クリエイティブな人々に「ここに解決すべき課題があり、ビジネスチャンスがある」と知らせるという方法です。
(第5回に続く)
第5回では、地方のエコシステムが重要な理由や、小さな都市がイノベーションの拠点になるための方法について、お話しします。
[このコンテンツは、東京を拠点とするスタートアップポッドキャストDisrupting Japanとのパートナーシップにより提供されています。 ポッドキャストはDisrupting Japanのウェブサイトをご覧ください]
翻訳:藤川華子 | JStories
編集:一色崇典 | JStories 
トップ写真:Envato 提供

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本記事の英語版は、こちらからご覧になれます
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